4.舞台音響設備について

この項では、「1.PAの基礎の基礎」の内容を基礎として、現在舞台ではこれがどう応用されているのかについてお話ししようと思います。

まずはおさらいから。

・PAの最小構成はマイク・アンプ・スピーカー
・音(=空気の振動)をマイクが拾って電気信号に変換、アンプが増幅し、スピーカーが増幅された電気信号を空気の振動(=音)に再変換している
・ミキサーは複数の音源をミックスしてアンプに送る

これが「PAの基礎の基礎」でした。
で、これが舞台音響になるとどういう風になっているのか・・・という話なんですが、劇団さんや音響さんごとに独自のシステムを構築されている場合がほとんどなので、もっともシンプルな基本構成の例を挙げてみようと思います。

はい、こんな感じですね。
CDプレーヤーなどをミキサーに繋いで、そこからアンプ→スピーカーという流れ。
プレーヤーを二台以上用意して、音楽に効果音を重ねて鳴らしたり、楽曲と楽曲を切り替える、といった演出に対応するケースもよくあります。
CDプレーヤーのかわりに、iPodなどのデジタルプレーヤーや「サンプラー」という効果音の再生に適した機材とか、最近ではパソコンを繋いでいるケースが多いですかね。ちなみにウチも今はパソコンですが、7~8年前まではCDプレーヤーとサンプラーでした。

実はミキサーには「ヘッドアンプ」という小型のアンプが内蔵されており、プレーヤーから入ってきた電気信号を僅かながら増幅することができます。
これにより、ミキサーは劇中にリアルタイムに変化する「音量の調整用機材」としての側面も持っているんです。
プレーヤーをミキサーに接続するのは、このためであるとも言えます。

2.日常にあるPAの仕組み」で、「CDプレーヤー(PCなども同様)にはアンプが内蔵されている」という話をしましたが、それは家庭用でのお話。
舞台などで使う業務用のCDプレーヤーには、アンプは基本的に内蔵されていません。
というのも、家庭用(正式には”民生用”と言います)のプレーヤーには、だいたい6~10畳程度の部屋で音楽を聴くのに十分な出力のアンプが内蔵されており、ホールで使うには出力がまるで足りないんですね。
そのため、業務用のアンプはそれに見合った大出力を持つ大型の専用アンプが必要になるわけです。
会場の広さや屋内、屋外など、それによって必要なアンプの出力が変わってくるので、CDプレーヤーとは別々になっていた方が都合がいいんですね。

ちなみに、こんなもん一般家庭で使おうものなら秒で苦情が来ます。
アパートや賃貸マンションでやったら、確実に追い出されます。
なにしろ、野外フェスなんかで使うアンプは家庭用の100倍以上の出力がありますし、会議室用でさえ5~10倍くらいありますから。
苦情で済めばいいけど、警察沙汰になりかねないので絶対にやめましょう。

あとは、プレーヤーに何を使うのか、スピーカーは何台用意するのかとか、あいだに音質を調整する機材を挟んだり、というところで音響システムを組み立てていきます。
なので「独自の音響システム」といっても

プレーヤーミキサーアンプスピーカー

という基本構成は変わらない、というところで今回のまとめとさせていただきます。


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